― 不動産から映画、エンタメまで中国式コングロマリット ―
1|大連から始まった巨大企業
柴くん:
「小雪ちゃん、“大連万達集団(ワンダグループ)”って名前は聞いたことあるけど、どんな会社なの?」
小雪ちゃん:
「万達は1988年に遼寧省・大連市で生まれた会社なんだ。当時はまだ中国の経済開放が始まったばかりで、不動産開発を中心に急成長したの。90年代には都市の住宅開発で存在感を出し、2000年代には“商業施設の開発”に力を入れるようになったんだよ。」
柴くん:
「不動産からスタートして、いまはエンタメや映画まで手がけてるんだよね?」
小雪ちゃん:
「そう。創業者の王健林(ワン・ジエンリン)会長が“ただの不動産屋で終わらない”って方針を打ち出して、万達は不動産をベースに“文化・観光・映画”へと事業を広げていったんだ。」
2|ショッピングモールの帝国「万達広場」
小雪ちゃん:
「万達の顔といえば“万達広場(Wanda Plaza)”だよ。これはショッピングモールのブランドで、中国全土に400以上展開しているの。日本で言えば“イオンモール”をさらに巨大にして、ほぼ全国区に広げたイメージだね。」
柴くん:
「400!?イオンモールが国内に170くらいだから、倍以上あるんだね。」
小雪ちゃん:
「そう。中国は都市化のスピードが速かったから、地方都市や新興都市にも次々と出店して、地域の“ランドマーク”になってるんだ。」
柴くん:
「つまり、万達広場ができると“ここが街の中心”って感じになるんだね。」
3|映画館とハリウッドへの進出
小雪ちゃん:
「万達は“不動産+エンタメ”を組み合わせるのが得意。2000年代には映画館事業に参入して、“万達電影(Wanda Cinema)”を全国に展開。今では中国最大の映画館チェーンなんだ。」
柴くん:
「へぇ、日本でいうと“TOHOシネマズ”や“イオンシネマ”みたいな感じ?」
小雪ちゃん:
「うん。しかも万達は中国だけじゃ満足せず、2012年にアメリカの映画館大手AMCを買収。世界最大級の映画館グループになったんだ。さらにハリウッド映画制作会社の買収にも動いて、“中国から世界映画産業を握ろう”って夢を描いたんだよ。」
柴くん:
「えっ、中国の会社がハリウッドにまで!? すごいスケールだね。」
小雪ちゃん:
「ただ、アメリカ側の規制や資金繰りの問題で計画の一部は縮小されたけど、中国資本がここまで映画に進出したのは衝撃だったんだ。」
4|テーマパークとホテル事業
小雪ちゃん:
「万達はテーマパークにも挑戦していて、“万達城(Wanda City)”という複合リゾートを作ったんだ。ディズニーランドに対抗するようなテーマパーク+ホテル+ショッピングモールのセット。」
柴くん:
「中国版ディズニーみたいな感じだ!」
小雪ちゃん:
「そう。ただ、上海ディズニーランドが大成功した一方で、万達城は投資規模が大きすぎて採算が合わず、結局一部を売却することになったんだ。」
柴くん:
「なるほど…ディズニーってやっぱり強いんだね。」
5|スポーツや文化事業にも
小雪ちゃん:
「万達はスポーツや文化事業にも手を出してたよ。中国サッカーのクラブを持ったり、FIFA(国際サッカー連盟)のスポンサーになったり。エンタメ全般をカバーする“総合文化企業”を目指したんだ。」
柴くん:
「つまり“イオン+東宝+オリエンタルランド+Jリーグ”みたいな会社ってことか!」
6|売上と規模
小雪ちゃん:
「2024年の売上は約6兆円。不動産開発や商業施設、映画館事業が柱だね。最盛期にはもっと大きく、世界の富豪ランキングで王健林会長がトップに迫った時期もあったんだ。」
柴くん:
「6兆円って…日本の“イオン+東宝”をまとめた規模ってこと?」
小雪ちゃん:
「うん、それくらいのイメージでいいよ。中国の市場規模を背景にすると、日本の大手をまとめてもしのいでしまうくらいになるんだ。」
7|不動産“三強”との違い
柴くん:
「そういえば万科(Vanke)とか碧桂園(Country Garden)、恒大(Evergrande)と比べるとどうなの?」
小雪ちゃん:
「いい質問だね!この4社はよく比べられるけど、事業スタイルが全然違うんだ。」
- 万科(Vanke):住宅マンション中心。“堅実経営”で安定感あり。
- 碧桂園(Country Garden):地方都市に強く、低価格住宅を大量供給。庶民の家づくりを支えた。
- 恒大(Evergrande):とにかく拡大志向。住宅だけでなく電気自動車・サッカー・テーマパークなど多角化しすぎて破綻。
- 万達(Wanda Group):不動産をベースに、商業施設・映画・エンタメに特化。他の3社より“文化・体験”に強い。
柴くん:
「なるほど!住宅に強いのが万科と碧桂園、失敗したのが恒大、エンタメに走ったのが万達ってことか。」
8|日本企業との違い
小雪ちゃん:
「日本だと“三井不動産”や“イオンモール”、映画なら“東宝”、テーマパークは“オリエンタルランド(ディズニー)”って分かれてるよね。でも万達はそれを全部まとめてやってしまう。まさに中国型コングロマリットなんだ。」
柴くん:
「日本企業を足しても追いつかない感じがするね。」
小雪ちゃん:
「そうだね。中国は市場が広い分、思い切った多角化ができるんだ。ただしその分リスクも大きくて、失敗したら一気に経営が揺らぐのが弱点でもあるんだよ。」
9|今後の課題
小雪ちゃん:
「万達は2020年代に入ってから、不動産バブル崩壊やコロナ禍の打撃を受けて、資産売却や事業縮小を余儀なくされてる。特にテーマパークやホテルは投資負担が重くて苦戦中。でもショッピングモールや映画館は依然として強いから、“安定収益源を守りつつ、海外展開をどうするか”が課題だね。」
柴くん:
「つまり、派手に広げすぎて、今は“守りの経営”にシフトしてるんだ。」
まとめ
- 大連万達集団は1988年設立、中国の不動産+エンタメ大手
- ショッピングモール「万達広場」は全国400カ所以上、日本のイオンの倍規模
- 映画館「万達電影」で中国シェアNo.1、米AMC買収で世界最大級に
- テーマパークやホテル、スポーツにも進出 → ただし投資負担が大きく整理中
- 2024年売上は約6兆円、日本のイオン+東宝規模に匹敵
- 他の“三強”と比較すると、“住宅の万科・碧桂園、拡大で失敗した恒大、エンタメ型の万達”という構図
- 日本企業と違い、不動産・映画・モール・テーマパークを一社で抱える中国型コングロマリット
小雪ちゃん:
「万達は“中国式イオンモール+東宝+ディズニー”みたいな存在。成功も失敗も大きいのが特徴だね。」
柴くん:
「すごい…中国の企業って本当にスケールもリスクも大きいんだね。」
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