― 無料セキュリティから“中国のサイバー防衛”へ ―
1|どんな会社?
柴くん:
「小雪ちゃん、“奇虎360(チーフー・サンリューマル)”って、なんだか不思議な名前だね。どんな会社なの?」
小雪ちゃん:
「奇虎360は2005年に設立された中国のIT企業で、セキュリティソフトやインターネットサービスを中心に展開している会社だよ。特に有名なのは無料アンチウイルスソフト『360安全衛士』。中国のパソコンユーザーの多くがインストールしたんだ。」
柴くん:
「無料でウイルス対策って、すごい太っ腹!」
小雪ちゃん:
「そう。中国では“まずユーザー数を取る”って発想が強くて、奇虎360は“無料セキュリティ”で一気に知名度を広げたんだよ。」
2|どれくらい大きいの?
小雪ちゃん:
「2024年の売上は約4,000億円。トレンドマイクロ(日本)が約2,500億円だから、それより大きい規模だね。しかも奇虎360はセキュリティだけじゃなく、検索、ブラウザ、アプリ配信まで手を広げてるんだ。」
柴くん:
「セキュリティ企業なのに、GoogleやLINEみたいなことまでやってるってこと?」
小雪ちゃん:
「そう。ユーザー基盤を広げたあとに、広告やプラットフォーム事業でマネタイズしたんだよ。」
3|主なサービス
小雪ちゃん:
「奇虎360のサービスは大きく分けるとこんな感じだよ。」
- 360安全衛士:無料アンチウイルスソフト(数億ユーザー)
- 360ブラウザ:中国シェアNo.1のWebブラウザ
- 360検索:中国の検索エンジン。百度に次ぐ第2位
- 360モバイルアプリストア:Android向けアプリ配信
- IoT・スマート家電のセキュリティ管理
柴くん:
「まるで“Google+トレンドマイクロ+LINE”を合わせた感じだね!」
4|ビジネスモデルの秘密
柴くん:
「でも、無料でセキュリティソフトを配ったら、どうやって儲けてるの?」
小雪ちゃん:
「いい質問!奇虎360は“広告モデル”で収益を上げてるんだ。セキュリティソフトやブラウザを入り口にしてユーザーを集め、その上で広告を出す仕組み。あと、企業向けの有料セキュリティや政府向けのサイバー防衛事業でも収益を得てるよ。」
柴くん:
「つまり“無料で集客 → 広告や法人契約で収益”って流れなんだね。」
5|サイバー防衛への進化
小雪ちゃん:
「奇虎360は最近、“中国のサイバー防衛企業”としても注目されてるんだ。
- APT攻撃(国家レベルのサイバー攻撃)への対応
- AIを活用したセキュリティ解析
- IoT・5G環境での脅威監視
中国政府と協力して、国全体のサイバー防御を支える役割を担っているんだよ。」
柴くん:
「それって、アメリカの“パロアルトネットワークス”とか“クラウドストライク”みたいな存在ってこと?」
小雪ちゃん:
「そうだね。でも奇虎360は“民間企業でありながら国家安全保障にも直結”っていう独特の立場にあるんだ。」
6|ライバル企業との比較
柴くん:
「他のセキュリティ会社と比べると、奇虎360ってどうなの?」
小雪ちゃん:
「比べるとこんな感じだね。」
- トレンドマイクロ(日本):法人向けで世界シェアが強い。売上約2,500億円。
- カスペルスキー(ロシア):個人向けで有名だが、政治リスクで欧米から規制。
- パロアルト(米国):クラウドセキュリティ特化。売上1兆円超。
- 奇虎360(中国):無料で大衆を囲い込み、広告・政府案件で成長。
柴くん:
「なるほど!アメリカは法人、ロシアは個人、日本は法人&個人、中国は“大衆囲い込み型”って感じだね。」
7|強みと課題
小雪ちゃん:
「奇虎360の強みは“圧倒的なユーザー基盤”。数億人単位でデータを持ってるから、脅威分析やAI学習に活かせる。
ただ課題もあるよ。」
- 広告依存度が高く、収益が安定しにくい
- 政治的に“国家と一体視”されやすく、国際展開に制約がある
- 技術面では米国大手に後れを取る部分もある
柴くん:
「なるほど。国内では強いけど、海外進出にはハードルがあるってことか。」
8|まとめ
- 奇虎360は2005年設立、中国最大のサイバーセキュリティ企業
- 無料セキュリティソフト「360安全衛士」で数億ユーザーを獲得
- 売上は約4,000億円、トレンドマイクロを上回る規模
- ブラウザ・検索・アプリ配信など“総合IT企業”に進化
- 中国政府と協力し、国家サイバー防衛の一翼を担う
- 強みは巨大ユーザー基盤、課題は国際展開の難しさ
小雪ちゃん:
「奇虎360は“無料で国民を守る”という戦略から始まって、今では中国のサイバー防衛の一角を担う存在になってるんだ。」
柴くん:
「なるほど!日本のトレンドマイクロとは違う方向で大きくなったんだね。」
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