中国フィンテックを動かす2大巨人
1. どんな会社?
柴くん:小雪ちゃん、中国のフィンテックってWeBankとアントグループが有名だよね。でも何が違うの?
小雪ちゃん:ざっくり言うと――
- WeBank:テンセント系。中国初の「ネット専業銀行」。スマホで口座や融資ができる。
- アントグループ(Ant Group):アリババ系。QR決済サービス「Alipay(支付宝)」を中心に、投資・保険・融資まで提供する金融スーパーアプリ。
柴くん:つまり、WeBankは銀行で、アントは「電子決済の帝国」って感じなんだね。
2. 規模の違い
小雪ちゃん:2024年の数字で比べるとこんな感じ。
- WeBank
- 総資産:約45兆円
- 純利益:約3,000億円
- 利用者数:3億人超
- アントグループ
- 年間決済取扱高:約1,200兆円(Alipay経由)
- 純利益:約7,000億円
- 利用者数:10億人以上
柴くん:WeBankも大きいけど、アントの決済規模は桁外れだな…。
3. サービスの違い
小雪ちゃん:サービス内容を比べると、役割が違うのがよく分かるよ。
- WeBank
- ネット銀行(預金・融資・送金)
- AIで信用スコアを算出 → 即時に小口融資
- 中小企業向けのデータ融資
- アントグループ
- QRコード決済(Alipay)
- 投資(余額宝)、保険、資産運用
- スーパーアプリ化で「財布の全部」をカバー
柴くん:WeBankが「銀行業務のオンライン版」、アントは「生活に密着した金融プラットフォーム」って感じだね。
4. 個別サービス比較
① 余額宝(Yu’e Bao)とは?
柴くん:アントのサービスで「余額宝(Yu’e Bao)」って聞いたことあるけど、何それ?
小雪ちゃん:Alipayの残高をそのまま運用できる投資商品だよ。2004年に始まって大ブームになり、世界最大級のマネーマーケットファンドに成長したんだ。
- 少額から投資できる(1円でもOK)
- 毎日利息がつく
- いつでも引き出せる流動性の高さ
柴くん:それ、ほぼ「貯金みたいに使える投資」じゃん!
小雪ちゃん:そう。ピーク時には残高が約20兆円超に達して、普通の銀行預金を超える勢いだったんだよ。
② WeBankの信用スコアAI
柴くん:WeBankは融資が得意って聞いたけど、どうやって審査してるの?
小雪ちゃん:AIを使った信用スコア分析だよ。利用者の――
- WeChatでの取引履歴
- 公共料金の支払い状況
- EC(ネット通販)の購入履歴
こうしたデータをもとに信用度を算出して、数秒で融資を判断するの。
柴くん:銀行に書類を山ほど出す日本の融資とは大違いだな…。
小雪ちゃん:この仕組みで、WeBankは延べ数億件の小口融資を提供してるんだよ。従来の銀行に相手にされなかった人や小規模事業者を支えてるんだ。
5. 日本企業に例えると?
柴くん:日本でいうと、どんな感じになる?
小雪ちゃん:イメージはこうかな。
- WeBank=「楽天銀行+LINE」を組み合わせた感じ。
- アントグループ=「PayPay+楽天証券+楽天保険」を全部まとめたうえで、ユーザーが10倍いる。
柴くん:それもう、日本のフィンテック企業を全部足しても勝てない規模だね…。
6. 規制と課題
柴くん:中国政府はこの2社をどう見てるの?
小雪ちゃん:規模が大きすぎるから、すごく注視してる。
- アントグループは2020年に世界最大級のIPOを計画したけど、規制強化で延期に。
- WeBankは銀行ライセンスを持つから規制に沿いやすいけど、それでも「信用スコアAI」の透明性については議論がある。
柴くん:便利だけど、国としては「金融の安全性」を守らないといけないんだね。
7. まとめ
小雪ちゃん:まとめると――
- WeBank:総資産45兆円、利用者3億人。AI信用スコアで小口融資に強い。
- アントグループ:取引額1,200兆円、利用者10億人。Alipay決済+余額宝で生活に根付く金融スーパーアプリ。
- 個別サービス比較:
- WeBank=信用スコアAIによる即時融資
- アント=余額宝による「投資+貯金感覚」の資産運用
柴くん:銀行として金融の入り口を開くのがWeBank、生活全体を金融で包み込むのがアントってことか!
小雪ちゃん:そう。中国フィンテックの二大巨頭は、役割が違うけど両方とも世界をリードしてるんだよ。
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